プロ意識

私の経験の中で、「看護師は、2つ目の資格です」と言う学生に出会うことがある。その資格で何年か業務経験があるというのは、まさに「看護✖○○」である。

たとえば、歯科衛生士さんとして働いていた経験を持つ看護学生の口腔ケア、美容師の資格を持つ学生のシャンプーやドライヤーで乾かしている様子が素敵。「すばらしい~」と神わざを見せてもらった気持ちになる。さらに患者さんの個別性に対応した今までの専門性を生かしてほしいと願っている。ただ、技術面を生かしてほしいと言っているのではない。プロ意識だ。2つのプロ意識を持って働くという覚悟だと思う。

学生の実習期間をきっかけに、ずっと注入食だった人が食事開始できたり、ずっと車椅子だった人が歩行器の訓練を開始できたりということは珍しいことではない。学生の指導を通して、臨床指導者さんのプロ意識にも火が付くのだと思う。患者さんも一歩踏み出す契機になっている。

そんな時、患者さんも喜び、学生さんの学びにもなり、指導者さんの看護力も高められ社会貢献できるという「三方よし」の状態になる。

この「三方よし」とは、近江商人の経営哲学のひとつとして知られている。 商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売という考え方だ。言ってしまえば、簡単なことだが、「三方よし!」と指さし確認をする勢いで取り組んでもあまりうまくいかないのが世の常である。

では、どんな時うまくいくのか考えてみた。それは、想定外のものに触れることである。頭の中が大混乱という状況に出会うこと、そしてその環境から「正解」を探すのではなく、「えー--どうするー---」「ごめん、私もわからん」みたいなことになると、どうやら今までの固定概念がぐらつくようだ。

「病院とは」「看護とは」「教育とは」「実習とは」という固定概念がぐらぐらしたときが、脱皮の合図かもしれない。

プロ意識を持つということは、固定概念を何度もぐらつかせ、あるいは自ら破壊し、再生を繰り返すことのできる実践者だけが持つ意識だと思う。

「看護」とは何かについて考えていくことを意図として、「看護師日記」を書くことにしました。私の看護師、看護教育の経験に基づいて表現していますが、人物が特定されないように、また文脈を損なわないように修正しています。