本質かつ具体的な質問をすることで思考を整える。

学生や新人看護師さんの思考力、特に臨床判断能力を高めるためには、指導者の質問力はとても大事です。以前にもご紹介した『臨床判断ティーチングメソット』(三浦友里子 奥裕美著 p81学習ガイド)をもとに質問用紙を作成してみました。

まずは、受け持ち患者さんの概要をつかみます。Aさん、年齢、性別、診断名、症状、入院日、今回の入院における治療方法とその経過、今の状態や主訴を把握します。

たとえば、第107回看護師国家試験午後92問を参考にして、概要を例に挙げると以下の通り。

Aさん、56歳、男性は、労作性狭心症のため、経皮的冠動脈形成術<PCI>目的で7月13日入院となった。Aさんは、コンビニエンスストアの店長で自動車を運転して通勤している。不規則な生活が続き、ストレスが溜まることも多く、十分な睡眠がとれないこともあった。脂質異常症の既往がある。硝酸薬、カルシウム拮抗薬、抗血小板薬を内服開始。その後、外来通院を続け、以前と同様に負荷のかかる作業もできるようになっていたが、7月上旬、胸部の圧迫感が強くなり、時々左上腕から前腕にかけての放散痛も出現するようになったため入院となり、7月14日経皮的冠動脈形成術<PCI>を受ける予定である。

まずは、労作性狭心症や経皮的冠動脈形成術<PCI>を学びます。問題となるのは冠状動脈の灌流、血液凝固です。ここまでは、今までの学習方法だったと思います。加えて、より臨床判断能力をアップするために、患者の訴えに焦点を当てます。つまりこの事例では痛みです。ほかに疲労、睡眠、ストレス、不安などに焦点を当てることもできます。

以下の(  )の中に焦点化したキーワードを入れるだけで、本質かつ具体的な質問項目ができます。

同じ「痛み」でも、労作性狭心症で経皮的冠動脈形成術<PCI>を受ける前の患者の「痛み」と、脊柱管狭窄症の「痛み」と、手術後の創部痛では、成り立ちが違いますから当然、準備、気づき、解釈が違ってきます。こんな地道な思考プロセスの反復が、臨床判断能力を鍛えるのだと思います。シミュレーション学習や実習指導、新人看護師教育に活用していきたいです。

準備 

  • (     )について、知っていることは何ですか?まだ、よくわかっていないことは何ですか?
  • 患者の症状(     )によって、身体、精神、生活、人生などにどんな影響を及ぼします?
  • 治療方法、処方された薬は、(     )にどんな影響を与えますか? また、どんな副作用がありますか?
  • (     )は、患者の成長発達にどのような影響を与えますか?
  • (     )について、患者の病室(訪問看護の場合はご自宅)に入ったとき、確実に何について気づくようにしますか?

気づき

  • 患者の全体的な様子どうでしたか?
  • 患者の行動や様子どうでしたか?
  • 患者の(     )に関する気づきは何ですか?

解釈

  • 患者の(     )について、まとめることはできますか?
  • 患者の(     )について、看護問題を特定できますか?

   □ 顕在しているもの 潜在しているもの つよみ

方向性の吟味と介入

  • 患者の(     )について、看護の方向性は何ですか?
  • 患者の(     )について、問題解決のために何をしますか? 
  • 患者の(     )について、いつまでに解決しますか?

評価

  • 患者の(     )は、看護によってどうなりましたか?
  • 患者の(     )は、期待する結果となりましたか?
  • 期待する結果になったのはなぜですか?または、期待する結果にならなかったのはなぜですか?
  • この患者に対して、次にすることは何ですか?

振り返り

  • 今回、患者の(     )についての看護について、獲得した看護の方法は何ですか?
  • 次回、(     )についての看護を行う場面に出会ったとき、どんな看護をしますか?
  • ほかにどんな知識が必要と感じましたか?
  • この経験を通して、変化した看護観、価値観はありますか?