ベテラン看護師(見た目も実力も)と呼ばれる人が、新人看護師や学生を指導する場面があったら、新人看護師や学生は、いろんなことを質問して、自分の考えた行動計画を聞いてもらおうと躍起になるでしょうか。

多くの場合、指示に従おう、何でも教えてもらおう、判断や決断を委ねようという依存的な気持ちが起こってくるようです。もちろん、ベテラン看護師(見た目も実力も)と呼ばれる人がダメだと言っているわけではありません。頼りがいのある人=安心できる人と思うのは誰しもです。

私が看護師として働いていたとき、手術前の患者さんに「何か、心配なことや気がかりになっていることはありませんか」と尋ねると、「まあ、まな板の鯉ですから」と返答されることがありました。一先ずは手術に対して受容的で、主治医に対して信頼感があるのでしょう。しかし、一方では、依存的という味方もできます。依存的というのは、対等ではない上下関係があるのです。

つまり、育てる人が、育つ人を「下」に見ていたとしたら、「下」の人は敏感に察知します。「上」には従おう、逆らわないほうが無難という意識が働くと、もはや自分の意志で行動しなくなります。そればかりか、「あの人が言っているのだから間違いない」といった歪んだ安心感が、思わぬ医療事故を招くこともあります。

そして、自分が「下」を意識するだけで、「上」に対してやたらと反抗したり、言い負かせてやりたいというような意識が働いたりすることもあります。そんな時、育てる側は、「何を言っても、言う通りしてくれない」「同じミスばかりする」「指示が伝わらない」などの不満がたまります。そして、お互いに、エネルギーが衝突したり、空回りしたりして、どうもうまくいかない関係になってしまいます。

こんな関係性になっているかも・・・と感じたら、一度、育てる人と育つ人との関係が、上下関係、依存関係になっていないかチェックすることをお勧めします。そのまま経過してしまうと、「育たない場」になる可能性がありそうです。