垣間見せる顔
「今日は雨ですね」というと
「雨嫌い?」と聞かれたので
「ん、嫌いですね~洗濯物も乾かないし、通勤も大変ですからね、」と答えたら、やっぱりそう言うと思ったというような顔をして、ベッドに横むきになったまま私を見上げた。
「僕は好きだけどな・・・」
「雨のどんなところが好きなんですか?」と訊いてみると、ごろんと仰向けになって、
「特に、理由はないけど。たまにはいいかなと思う」
「確かに‥‥ですね」
その患者さんは、入院という非日常を味わっているのだろうか。
その患者さんは元教師。
同室者のあれこれを世話してくれて、報告してくれる。
そして看護師の一人一人をよく観察している。
話し方も「先生」の時がある。
今は患者さんだけど、ふとした時に普段の顔、長年の顔があらわれる。
私は、そんな顔を発見するのが好きだ。目が生きているからだ。
入院は通過点。
晴れの日が続いた時の雨のようなもの。
病院を居場所と言うには、何かが欠落している。
「看護」とは何かについて考えていくことを意図として、「看護師日記」を書くことにしました。私の看護師、看護教育の経験に基づいて表現していますが、人物が特定されないように、また文脈を損なわないように修正しています。