前・麹町中学校校長の工藤勇一先生は、学力格差の解消には「やらされる学習」ではなく、自律的な学習意欲の育成が重要だと述べています。そのために周囲の大人が使うべき3つの言葉を紹介しています。「どうした?」と現状を聞くことで子どもの状況を理解し、「このあとはどうしたい?」と意思確認をすることで主体性を促し、最後に「私は何をしたらいい?」と問いかけて支援の姿勢を示すと述べています。(参考:子どもが主体的に動くようになる「3つの言葉」横浜創英・工藤勇一校長インタビュー https://resemom.jp/article/2020/09/16/58137.html

キャンプナースでのエピソードです。https://campnurse.jp/856

野外活動は、子どもの自律的な学習意欲の育成が重要です。そんな中で、仲間同士のけんかもあります。

野外活動中に、小学5年生の蓮くん(仮名)と小学6年生の悠斗くん(仮名)が口論を始め、ついには取っ組み合いのけんかに発展しそうになりました。キャンプナースがその場にいたので、2人を落ち着かせるために介入しました。

キャンプナースはまず、蓮くんと悠斗くんに「どうしたん?」と静かに尋ねました。蓮くんは怒りに任せて「悠斗がずっと俺のことをからかってくるねん!」と叫び、悠斗くんも「ちがう!蓮がわざと俺の作ったものを壊してん!5年のクセに!」と反論しました。キャンプナースは冷静に両方の話を聞きました。

次に、キャンプナースは「このあとはどうしたい?」と2人に問いかけました。蓮くんは驚いた表情を見せましたが、少し考えて「もうけんかしたくないけど、悠斗が謝ってくれないと気が済まない」と答えました。悠斗くんも、最初は黙っていましたが「俺もけんかはしたくない。でも、蓮が先に謝って欲しい」と言いました。

キャンプナースはうんうんと二人の話を聴いたうえで、「私、何か手伝えることある?」と2人に聞きました。この質問に、蓮くんは「わからん」と答え、悠斗くんも「蓮に先に謝ってくれる方法を教えて欲しい」と言いました。しばらく3人で沈黙していました。そして、蓮くんが「俺が先に謝ったらええんやろ」と不機嫌そうな物言いで「ごめん」といってぴょこんと頭を下げました。すると悠斗くんも「僕もごめん」と言いました。

キャンプナースは、三人でお互いの目を見合って、ニコッと笑って見せると二人も照れくさそうに下を向いてしまいました。悠斗くんは居心地が悪くなったかのように「蓮、遊びに行こ!」と言って二人で走り出していきました。今回、キャンプナースはこれ以上の介入しませんでした。本質の部分に触れていないかもしれません。しかし、誰かに何かを言わされるというよりも、自分たちで問題を解決していくための時間が大切な時もあると思いました。

このエピソードからもわかるように、3つの質問と言うのは、考える力をつけるためにも、主体性を引き出すためにも効果的です。しかし、蓮くんは「わからん」と悠斗くんの「蓮に先に謝ってくれる方法を教えて欲しい」とでは、かなり言語的な表現力の違いが伺えます。これは、6年生だから、5年生だからと言う問題ではないように思います。そもそも表現力が違うのだと思います。悠斗くんの「蓮に先に謝ってくれる方法を教えて欲しい」と言う言葉が、蓮くんの「ごめん」を引き出してくれています。これは言わされているのではなく、先に謝るという方法に気づいたのだと思います。

看護学生、新人看護師の教育の場においても、この3つの質問が効果的な場面があります。ただ、表現力には個人差があるので、聴く力が重要であることは言うまでもありません。