学生の実習日誌
私が夜勤の朝、患者さんに「昨晩は、お薬を飲んでからすぐに眠れましたか?」と訊くと、「・・・・・・」と、返事が返ってこなかったことがあった。血圧を測って、身の回りのこまごまとしたことをしたうえで、退出しようとすると、「まあ、眠れたよ」と返事が返ってきた。「よかったです~」と言ったものの、奇妙な「間」が不思議だった。返事を考えてくれていたのか、どう表現していいのかを考えていたのか、聞こえにくかったのか、それとも・・・・?首をかしげながらスタッフステーションに戻った記憶がある。
学生の実習日誌を読んでいると、面白い言葉を発見した。私と患者さんの間には「時差がある」と。孫ほど歳の離れた患者と学生の間に、「時差」があっても不思議ではない。
感じていること、考えていることがすぐに言葉にできない、概念の解釈に時間がかかる、聞き取りづらい、理由はいろいろある。
「時差がある」とわかっていれば、待つことも心地よい。さりげなく待つ方がいい。あるいは、なるべく時差を埋めるように「質問」を工夫するのもよい。
歳の差が時差を生んでいるばかりではない。健康の状態によっても、また価値観の違いや意見の違いによっても時差を生む。
時差がある「旅」を楽しむように、私とあなたの間にある時差を楽しみたいものである。
学生から学ぶというのはこういうことだと思い、楽しくなった。
「看護」とは何かについて考えていくことを意図として、「看護師日記」を書くことにしました。私の看護師、看護教育の経験に基づいて表現していますが、人物が特定されないように、また文脈を損なわないように修正しています。