春の空とつばめ

父は、車椅子に乗って庭に出た。

空を見上げて、何かを探している。

つばめだ。

 

つばめは父の頬をなぜる風のように駆け抜けて納屋に入っていった。

 

つばめの子は、皆巣立っていった。

父は知っていた。これが最後だと。

 

父が亡くなったあとも、毎年、つばめは来る。

知ったこっちゃないというような顔をしている。

 

私は、つばめに出会うと、父に出会ったような気持ちになる。