再会とお別れ

夜勤、廊下を歩いていると、視線を感じた。

カーテンの向こう側からだ。

スタッフステーションに一番近い部屋の明日手術予定の患者さんだ!

 

患者さんは、ベッドの頭元を挙げて座っていた。

私の顔をみると目でうなずいた。

「眠れないのですか?」と訊くと、かすかに首を振った。

「頭元を下げますか?」と訊くと、目でうなずいた。

目を合わせたまま、何も話さなかった。

浅い眠りの長い夜を過ごしていた。

 

彼女の手術が終わり、退院をして1年ほどたってから、小さな子どもと一緒にスタッフステーションに来てくれた。

「あの夜、私に気づいてくれてありがとう。涙も出ないほどしんどかった。ナースコールも押せなかった。体が棒のようだった」と話してくれた。

 

「お礼を言うのに、1年もかかってしまった」と、声を出して笑ってくれた。

「こちらこそ、わざわざお越しいただき、ありがとうございました」と頭を下げ、無邪気な子どもに手を振った。

 

この1年の間に、何があったのだろう。もう、癌は全身に転移しているというのに。

「看護」とは何かについて考えていくことを意図として、「看護師日記」を書くことにしました。私の看護師、看護教育の経験に基づいて表現していますが、人物が特定されないように、また文脈を損なわないように修正しています。