領域横断!シラバス作成に必要な視点
看護師基礎教育のカリキュラムにおいて、現在の対象特性に応じた 7 領域の看護学になったのが、1996年(第3次改正)でした。そして、2008年に統合分野が誕生して、現在に至っています。
看護教育は 10年後、20年後に活躍する人材の育成です。老年人口の増加、人口の減少、生産年齢人口の減少、出生数の減少に加え、人生100年時代、多死時代、認知症高齢者は 5 人に一人と予測される時代に突入しています。
私事ですが、私のお義父さん(88歳)は、先月、腸炎のために入院しました。入院中の検査の結果、心臓や前立腺など、あちこちの疾患のために退院のめどはなく、新型コロナウイルスの影響で面会もできず、家族としてはもやもやしています。このコロナ禍で父の退院後、介護のこと、経済面のこと、社会資源のこと、何より豊かな死を見守ることを家族で話し合っていきます。私自身が病院完結型から地域完結型の現実を見せつけられています。
人が生まれ、死んでいくまでの過程におこる様々なイベントに対し、人々が自分事として学び、心の準備をし、自ら望む生き抜き方を選択していくことを支援する看護の必要性を実感しています。そして、これからの社会は、市町村レベルの「地域」「コミュニティ」が力をつけていかなければ、父のようなケースの一つ一つに対応できません。
そこで、新カリキュラムは、学校のある地域に住む人々の強みや特性を存分に発揮でき、健康寿命を延ばしていける取り組みをしていく必要性を感じています。7領域の大幅な変更がない中で、地場産業や行政と看護学校が連携して、地域が人を育て、学生が地域の健康を見守るくらいの責務を持てる内容にしたいものです。それらは、発達段階の軸、健康のレベルの軸に加え、人々の幸福感や死生観などの多様性への対応、災害時への対応も含まれます。
したがって、母性看護学、小児看護学、成人看護学、老年看護学、精神看護学に、下記の項目が入っています。
- 健康学習支援活動【健康学習、健康診断、ヘルスプロモーション、性と生殖、健康な人はより健康になるようなフィードバックを含む】
- 健康の障害と回復過程【検査・治療論(薬物療法・手術療法)リハビリテーション・自己概念の再構築(変化への対応)】
- 終末期【リビングウイルと葛藤】
在宅・地域看護論においては、1.2.3が包含され、統合ではさらにアウトリーチできるよう組み立てていきたいです。
いずれにしても、この時期ですからシラバス作成チームが、領域横断を柔軟に解釈しながら組み込んでいきたいという時期でしょうか?