手術後の歩行

看護学生の外科病棟の実習にて・・・・。

 

看護学生が、患者さんに「聴診器でお腹の音を聴いたことがありますか?」と尋ねました。

「ないよ~」と答えると、「僕のお腹の音を聞いてみますか?」

「聴いてみるわ、どれどれ?」ぎゅるるるる・・・

「ぎゅるぎゅる聞こえる」「はい。僕のお腹の音は正常なんですよ。」

「じゃあ、わしの腹は?」「聴いてみますか?・・・・・どうぞ」

「なんも、聞こえんぞ!、あ、ちょっと聞こえた、また、聞こえんな・・・・」

「そうですね、少し、お腹の動きが弱いのかもしれませんね」

「・・・・・・・・だから、看護師さんたちは、歩け歩けといってたのか・・・」

「そうかもしれませんね」

「せやけど、歩いたら、お腹はちゃんと動き始めるのかな~。ちゃんと動き始めるんだったらな~なんぼでも歩くけど」

「僕も初めての外科病棟の実習なので、分からないんですよ。」

「なんや、分からんのかいな!」

「そうなんです。少し痛みが落ち着いて、リラックスできるとお腹の動きがよくなるというのは間違いないと思いますが・・・・」

「ほな、試してみるか。窓の外をみて戻ってくるわ。で、歩いた後、もう一回、腹の音聞いてみよ。」

「わかりました!では、指導者さんを呼んできますから、心の準備をしておいてくださいね!」

「わかった!」

 

こうして二人の実験が始まり、無事、窓の外を眺めることができました。

ご自宅の方角を指さして、「はよ、帰りたいわ」と言いました。

結果は、歩行後「お腹の音はよく聞こえた」と患者さんはおっしゃっていました。

 

私は、患者さんに学生の学習に貢献していただいたことに深々とお辞儀をしてお礼を言いました。

「わしも、若いもんを育ててきたから分かるねん。なんでも自分でやってみないとわからんねん。学生さんも、ええ勉強になったやろ。」

「おっしゃる通りです。ありがとうございました。」

 

学生は、私に言いました。

「患者さんも、ご自身の腸蠕動音に関心も持ってもらえると、歩く動機づけになってもらえると思いました。」と。

 

お互いが、お互いの立場を尊重し合っている「ケアの本質」を感じました。

「看護」とは何かについて考えていくことを意図として、「看護師日記」を書くことにしました。私の看護師、看護教育の経験に基づいて表現していますが、人物が特定されないように、また文脈を損なわないように修正しています。