一般社団法人看護教育支援協会では、これまでキャンプナース®の養成を通じて、子どもたちの野外・体験活動における健康と安全を支える仕組みを築いてきました。

この取り組みは医療的ケア児を取り巻く課題とも合致しており、今年は、支援学校の修学旅行の引率や宿泊訓練の同行などにも取り組んできました。

今後の社会的な支援体制の整備を進めるにあたり、考えをまとめてみました。

1. 支援学校卒業後の「18歳の壁」への対応

医療的ケアを必要とする子どもたちは、18歳を境に支援制度から取り残されやすい現状があります。卒業後の就労や居場所の不足は深刻な課題であり、家族の生活にも大きな負担を与えています。

キャンプナース®の養成で培った「医療と生活をつなぐ看護職の役割」は、この空白を埋める可能性を持っています。学校・地域・施設において医療的ケア児を支える看護師の配置や、卒業後の社会参加支援において、キャンプナース®の実践を応用することができると考えています。

2. 教育現場における医療サポートの不足

修学旅行や課外活動における看護師の不在、医療機器に対応できる環境整備の遅れは、医療的ケア児の教育参加を妨げています。

当協会が養成しているキャンプナース®は、野外活動や宿泊行事での健康管理・応急処置・アレルギー対応などに特化しており、こうした活動での医療的支援不足を補う人材となり得ます。

教育現場にキャンプナース®の仕組みを導入することで、子どもたちが安全に活動へ参加できる基盤を整えることが可能です。

また、キャンプナース®登録者はすでに有資格者であり、臨床経験があるため、求められる援助技術の再習得には速やかに対応できると考えています。

3. 家族を支える包括的なサポート体制

医療的ケア児の家庭は、送迎や日常ケアに伴う経済的・精神的負担が大きいと予測されます。その反面、「生まれてきてくれてありがとう、経験できなかったこと、今までの生活なら到底出会わなかった人たちと出会うことができた!人のつながりの温かさを感じた」というご意見もあると認識しております。

それらの意見を踏まえ、キャンプナース®のネットワークは、地域の大学やボランティアと協働し、送迎や生活支援の社会貢献活動に発展させることができるのではないかと考えています。さらに、キャンプナース®の登録者を活用した放課後等デイサービスや地域福祉の現場での人材確保は、家族支援の強化につながっていくのではないかとも考えています。

4. 医療人材育成とキャリア支援

キャンプナース®養成講座を通じて、在宅や地域でのケアに対応できるスキルを持った看護師を育成し、病院外での活躍の場を提示することは、看護師のキャリア支援と地域人材確保の双方に利益をもたらすものに構成していきたいと思っています。

5. 提言

  • 医療的ケア児支援のためのキャンプナース®スキルアップ講習会の実施

  • 学校・施設におけるキャンプナース®の配置と活用促進

  • 大学・地域との連携による送迎・生活支援の仕組みづくり

  • 看護師のキャリア支援を兼ねた多様な活動領域の創出

  • 学会・メディアを通じた社会的理解の促進

 

医療的ケア児とその家族を支えるためには、制度改正のみならず、地域・専門職・教育機関が連携する包括的な体制が必要です。キャンプナース®の取り組みは、まさにその一助を担い得る仕組みであり、地域社会における医療的ケア児支援のモデルケースとなっていくことを目指します。

当協会は、キャンプナース®を中心に据えた人材育成と地域連携をさらに推進し、医療的ケア児とその家族の安心した暮らしを支える基盤づくりに貢献していきたいと思います。