最近、悩みごとをAIに相談する人が増えています。

AIはいつでも、共感的で、受容的に、まず話を聴いてくれます。否定もせず、急かさず、こちらの都合に合わせて待っていてくれる。とても心地よい体験です。

ただ、私はここに少し懸念を持っています。

AIの「いつでも受容してくれる」体験に慣れると、リアルな人間関係の中で、少しでも反対意見を向けられたときに「この人はわかってくれない」と感じやすくなるのではないか。そして、そう感じた人がますます孤立していくのではないか、ということです。

人間同士の関係は、AIのようにいつもゆとりがあるわけではありません。

たとえば現場で「ちょっと、あとでゆっくり聞くね」と言われる。本当はその人なりの誠実な返事なのに、AIの即応・全受容に慣れた感覚だと「え?」と引っかかってしまう。すれ違いの芽は、こんな小さなところにあります。

アクティブバイスタンダーという考え方

医療・福祉の現場で私が大切にしているのは、アクティブバイスタンダーという考え方です。

何かが起きてからではなく、「なんとなく違和感がある」という段階で相談できる他者——チームの誰か——がいること。これが患者さんの安全にも、働く人を守ることにもつながります。

その「相談できる他者」は、AIではなく生身の人間です。忙しい時間帯もあれば、余裕のない日もある。完璧に受け止めてはくれません。だからこそ、AI時代の私たちには、こんな心構えが要るのではないでしょうか。

ひとつは、相手の「あとでね」を拒絶と受け取らないこと。それは関係を切る言葉ではなく、つなぐための言葉でもあります。

もうひとつは、自分が相談を受ける側になったとき。たとえ全部は聴けなくても、「気にかけているよ」という最小限のサインを返すこと。「今すぐは無理だけど、夕方なら時間とれる」——この一言があるだけで、相手の「え?」は「わかった」に変わります。

一番言いたいこと!

AIとの対話と人との対話は、性質の違うものとして分けて受け止めたい。一方の感覚を、そのまま他方に持ち込まないこと。その分別が、これからますます大事になります。